老年医学(1)

私は今、介護職員初任者研修修了に向けての勉強を進めているところですが、それにちなんで、臨床情報サイト「CareNet.com」から老年医学についての記事を私なりに整理して、しばらく連載してみたいと思います。

【事例】
85歳女性。自宅独居。糖尿病、高血圧、冠動脈疾患の既往有。呼吸苦を主訴に救急外来を受診。肺炎と診断し入院にて抗菌薬加療。肺炎の治療は適切に行われ呼吸苦症状も改善したが、自力歩行・経口摂取が困難になり自宅への帰宅不可能に。

治療はうまくいったにもかかわらず、状況が悪化してしまった。。このような事態を避け、すべての高齢者のQOLの維持・向上を図るために体系化された学問が老年医学です。

老年医学の原則と型(アプローチ)を知っておくことで、このような事例により良く対応することができるようになります。

老年医学の原則:老年症候群と多疾患併存
日本における平均寿命と健康寿命のギャップは、女性で12年、男性で7~8年ほどあり、この期間に多くの高齢者が抱える問題が老年症候群(記憶力の低下、抑うつ、転倒、失禁など)と多疾患併存(60歳以降では約20%の人が3つ以上の疾患を有している)です。高齢者の治療やケアにあたる時は、この老年症候群と多疾患併存があるという前提に立つことが大切です。

老年医学の型:5つのM
事例のような高齢者の診療においては、その状況の複雑さから「診断→治療」という線形的な思考では解決しないことがほとんどであり、そんな時に役に立つのが「5つのM」というフレームです。

  1. Matters most:最も大切なこと
  2. Medicine:薬
  3. Mind:認知機能・心
  4. Mobility:身体機能
  5. Multi-complexity:複雑性・落としどころ

これらを使って事例を考える上で、まずポイントとなるのは、1つめのM、Matters most(最も大切なこと)から考えはじめることです。

今、患者や家族にとって一番大切にしたいことは何か、肺炎を治療した後の生活に期待することが何であるかを入院当初からアセスメントしておくことで、行うべき介入を具体的に計画立案することができるようになります。

例えば、患者さんの希望が、自宅に帰って自立した生活をできる限り長く続けることであったとすると、肺炎の治療に加えて筋力維持や栄養状態の維持にも気を配る必要があり、肺炎治療のための絶対安静や絶食が本当に適切な選択なのかを改めて考え直すことができます。

100%正しい選択肢はないという中で、より良い治療・ケアを目指すとき、「5つのM」を糸口として考えることで、解決への道が拓けてきます。

しかし、最も大切な1つめのMは、なかなか医師に届きにくいということがあり、患者のより正確な情報を得るためには、看護師や地域の保健師、介護職などと連携することが大切です。その上で、介入の方法やバランスを考えながら落としどころを見つけることが医師に求められるスキルのひとつです。

以上です。いかがだったでしょうか?介護を学ぶ上でもとても勉強になる記事でした。
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詳しくはCareNet.com
https://www.carenet.com/series/geriatrics/cg004657_001.html
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